オグリキャップ
トロフィー工房のhiro02です。
馬券は、この方、一度も買ったことはありませんが、芦毛の怪物、オグリキャップの名前は知っています。地方の笠松競馬(岐阜)から中央競馬に移籍、GⅠレース4勝するなど活躍。限界をささやかれた1990年12月23日、有馬記念で劇的な勝利を飾ったラストランは、あまりにも有名です。
オグリキャップは、地味な血統(父ダンシングキャップ、母ホワイトナルビー(父シルバーシャーク))の地方出身です。この三流血統の地方馬が、中央競馬に攻め上がり、超良血エリート集団の中央馬を次々と打ち負かす姿に、競馬業界を越えて、一般社会の人々にまで共感を呼びました。競馬を知らないわたしには、オグリの戦績がどれほどすごいものかは、わからないのですが、ただ、どんなに人間の身勝手な都合に振り回されようと、ひたすら健気に一生懸命走る馬だった聞いています。
奇しくも、オグリの台頭と同じくして、わたしは、京都競馬場の近くに住み始めましたので、競馬業界の変遷は、比較的よく伝わってきました。80年代の終わりから90年代にかけてといえば、淀の週末は、人、人、人で溢れかえっていました。あれから、20年。折からの不況とともに、淀周辺はすっかり変貌いたしました。京阪淀の駅は、去年、京都方面行のみ新しく高架になり、大きな駅が完成いたしましたが、競馬開催日でも、混み合うことはありません。高いところから見下ろす競馬場の眺めはいいけど、普段利用するものにとっては、移動距離が長く、もっぱら使い勝手が悪いという評判です。
唐突ですが、わたしのお気に入りの小説に、宮本輝の「優駿」があります。実際の競馬は知らないのですが、小説なら読んだことがあります。北海道の小さな牧場で生まれ“オラシオン(祈り:スペイン語)”と名付けられた1頭のサラブレッドと、生産者、馬主、調教師、騎手、厩舎などの人々にまつわるお話(個人的には、馬主の社長の娘と、社長秘書の恋愛、特に別れの場面がお気に入りなのですが……)。
こちらに登場する、生産者の藤川老人のことばで、「終わりってのは、また始まるためにあるんだ。自分の作って育てた馬が、死ぬたびにそう思う。」というのがあるんです。このことばだけだと、何の説得力もないのですが、小説の中では、研ぎ澄まされた長老のことばで、とっても深いんですね。
今月3日、業界を越えて人気をさらった超アイドルホース、オグリキャップが逝きました。放牧中に右後肢を骨折し、安楽死の措置が取られたということです。戦績の優秀な馬は、今後も出る可能性はあるけど、オグリのようにファンの心をとらえる国民的人気馬は、もう出ないかもしれない、という人もいます。
でも、わたしは、そうは思いません。オグリの終わりは、オグリが始まるためにある……なにかとネガティブな暗い話題ばかりが取り上げられますが、一部の偏ったものの見方に捉われ過ぎていませんか。今の時代のオグリ、わたしの周りにもいますよ。実際、始めている人は、自分が始めているとは言わないものです。自分ががんばっているとは言わないものです。どんなことがあってもあきらめない、何くそ根性の熱い人、わたしの周りにもいますよ。
オグリキャップに合掌
トロフィーのご用命は、トロフィー工房まで。
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